FANTASTiC?

 少し前にアルバムが出ました。入稿に間に合ったという点だけでも素晴らしい作品だと思いますが、内容もかなりいいものだと自負しております。歴史に残る名盤です。
 何が良いって20曲も入っています。本当におかしいバンドなんですが、大真面目に19曲よりも20曲のほうがキリがいいという理由だそうです。10進法に呪われています。

 私の曲もいくつか収録されておりますが、これらを制作するにあたり、影響を受けた曲たちをまとめたプレイリストその他諸々を作りましたので公開したいと思います。所謂リファレンスプレイリストです。

 リファレンスというのは音楽業界的には元ネタみたいな意味で使われるので、それを公開するのは謎行動かもしれないのですが、創作の神秘性よりも鑑賞体験に立体感が生まれることのほうが大事な気がしたので公開することにしました。吉と出るか……。

 言うまでもないですが、作曲というか創作というのは”天才がある日突然思いつくもの”ではありません。積み重ねてきたもの、出会ってしまったものからの引用、再解釈、再配置が基本です(特に現代では)。むしろその角度や質がオリジナリティだと思っています。それらの文脈を知ってもらえることは、曲の楽しみ方が増えるのではないかと考えました。

 肌触りと角度がそれぞれ違ってはいますが、基本的に綺麗な曲が好きではあるようです。
 これらをどのように引用していくかの過程は、非常に乱雑かつ非線形ですので詳細に記述できる気がしないのですが、最近は基本的にはリズムが引用できそうな形であれば、上に乗ってるものはなんでも大丈夫だろうと考えています。

 とはいえやはりいつでも天才的ひらめきで引用、再構築できるものでもないので、組み合わせをガチャガチャと変えたり、わざとズラしてみたりと、割とサイコロを振っているような感覚もあります。その中で取捨選択をしながら成形していくのです。
 そしてその選択の基準はそれまでに培った自分のセンスなのですが、自分の気持ちに正直であることが出来れば、生まれるものはとても良いものになると思います。

 一部のファンからすれば需要に答えてこそのミュージシャンでは? と思われるかもしれませんが、私からすると全く逆で、新しい需要とか価値を作り出すのがミュージシャンの立場だと理解しているので、100%安心してもらえるような作品には現状あまり興味がないのです。

 知っての通り私は、ある種の血統主義に割と批判的な立場ではありますが、突き放して完全な断絶をする気もなく、現代V系のフォーマットにある部分では乗っている部分もあります。他方で、音楽的にズラしながら違和感を楽曲に組み込んでいるつもりでもあります。
 この違和感という毒が、さまざまな固定観念を溶解してくれたらいいなと思っています。私個人としても、バンドとしてのユナイトもV系の枠を、誰も気づかないレベルでジリジリと広げていると思っています。
 

・書籍
『ひかり埃のきみ』 福田尚代
 回文と美術の本です。美しい回文がいくつも収録されており、その不思議な語感、意味からの浮遊感など、『灰色〜』の制作でかなり影響を受けました。

『ポール・ヴァーゼンの植物標本』 ポール・ヴァーゼン、堀江敏幸
 標本図鑑と短編小説が編纂された本です。花晨を書く際に偶然読んでいて影響を受けました。標本を読んでいる今の自分達が、読み解く過程で時間を超えてどこへでも行ける感覚が素敵でした。

・動画
https://youtu.be/qGQCTJgyk1c?si=SCTKgoNhqASel1af
 私はNewsPicks民ですのでそちらで見ておりましたが、当時この二人はかなり微妙な関係だった気がするので、それも含めてワクワクしておりました。『cogito天才の』の歌詞の発想元です。

・人
ていぬさん(https://x.com/tekitou_dog
『酔性キャンディ』を書く際にシンセ周りの音作りなどで参考にしました。めちゃくちゃ綺麗な音を作っていらっしゃいます。普通にFANBOXで支援中です。

 クリエイターとしてのエゴとして、色々と書き連ねてみました。あと、もし作曲されている方とかバンドをやっている方がいらっしゃったら全然ステムとかあげるので連絡ください。

 しかしちゃぶ台をひっくり返すようですが、これらが誰かの好きとか嫌いとかに還元されていくのに全く関係なんてないですし、もっというと、自分が好きなものを好きな理由は、自分にしかわからない言葉でいいはずです。これらの文章を無理やり咀嚼しないと好きとは言えないという、選民的な理由づけに使われるくらいなら、何の説明も出来ないけど好きでいてくれるほうが素敵です。
 というより、言葉にしなくてもできなくても、部分的にはそれでもいいと思っています。言葉にした瞬間に失くなるものもかなりあるので。
 誰かが少しでも面白がってくれる内容でありますように。そしてとにかくこのアルバムが私は好きです。